関西の沖釣り名人 今井浩次の「今日も釣り気分」

　
　昨日の台風はいかがでしたか？。近畿直撃ではないし、大したことはないかな、と思っていたのですが、結構、風雨が強くなりましたね。今朝、散歩していると道路わきには強風で折れた木の枝が散乱していましたよ。
　台風で一番に思い出すのが僕が若かりし頃の山行きでした。
　今は亡きＹ先輩たちと旗揚げしたワンゲル部の初の遠征が北アルプス立山連峰の名峰「剣岳」だったのです。剣岳登頂を目指す前夜、弥陀ヶ原にベースキャンプを設営したのですが、太平洋上にあった台風が急に進路を変え北陸地方を直撃したのです。
　その夜、強風で飛ばされないようひと晩じゅうテントを押さえて夜明けを待ったのが、今のことのように思い出されます。
　でも、このときの遠征は苦あれば楽ありでした。翌日は見事に晴れ上がり、剣岳の雄姿を存分に堪能することが出来たのです。
　山行きのとき、まるで野人のようなＹ先輩に教えたもらったのがアケビの味でした。秋には黄色く染まった山芋の葉を探し、ムカゴを取ることをも覚えました。ムカゴは蒸したりムカゴ飯にしたりするのもいいのですが、山では生のまま何もつけずに齧りました。よく熟したムカゴは、山芋そっくりの味でした。櫟（いちい）の木になる赤くて小さな実が甘くて美味しいことも教わりました。
　Ｙ先輩には山の楽しみ方を教わりましたが、釣りの楽しさを教えたのは僕です。晩年はよく一緒に釣りに出かけたのですが、いまはもうそんな夢さえかないません。
　アケビの実を見るたびに野人のようなＹ先輩のことが思い出されます。